インクル115号 2018.7.25 特集:100円ショップと共用品 目次 拡がる100円ショップ~様々な場面でフル活躍~ 2ページ 作業療法士にとっての100円ショップ 3ページ 100円ショップで見つけた共用品 4ページ 100円ショップ探訪記 5ページ 脆弱皮膚の私が見つけた100円グッズ 6ページ 100円ショップの補聴支援グッズ 7ページ 100円ショップは片手マンのトレジャーランド 8ページ 高齢者の立場で利用する100円ショップ 9ページ キーワードで考える共用品口座 第105講 10ページ 第19回共用品推進機構活動報告回 11ページ ISO/TC173/SC7総会開催 12ページ アクセシブルデザインについて 13ページ 公益社団法人日本リウマチ友の会第58回全国大会に参加して 14ページ 日本AED財団の目指すこと 15ページ 事務局長だより 16ページ 共用品通信 16 ページ 2ページ 拡がる100円ショップ~様々な場面でフル活躍~ 共用品推進機構の常設展示室の一角に“100円ショップ・共用品”のコーナーがあります。 会議などで訪れた方々から、「これ100円ショップで売っているの?」、「すごく使いやすい」、 「お店で探してみる!」という声が度々聞かれます。 100円ショップの特集を組むにあたり、100円ショップの人気をけん引している会社の一つ、 (株)キャンドゥ(東京都新宿区)広報担当の栗田梓未(くりたあずみ)さんにお話を伺いました。 * * * * * * * ――企業理念についてお聞かせください。 栗田さん:キャンドゥでは企業理念といたしまして下記内容を掲げております。 【価値観】100円のすばらしさに誇りを持ち、どこまでも追求する 【志すべき所】老若男女すべての人に利用してもらえるブランドにする 【使命】100円ですべての人を幸福にする 100円で人を感動させたい。日常の暮らしにこそ「発見」を。ふだん使う物にこそ「品質」を。 気軽な100円にこそ「驚き」を。身近な買い物にこそ「楽しさ」を。 私たちはお客様の立場に立って、新しい感動をつくり続けます。 いまや100円ショップは生活に欠かせない店舗の一つとして拡がっています。 年齢や性別などを問わず、様々な人に利用をしていただき、キャンドゥで買い物をしたい!と言っていただけるよう、 信頼No.1を目指しております。 ――店舗について、棚の設置、表示の分かりやすさなど工夫はされていますか? 栗田さん:現在の新しい店舗や、リニューアルを行った店舗は、通路幅を広く取りカートやベビーカー、 車椅子などでも通行しやすいような工夫を行っています。また、店内が見渡しやすく、棚は高すぎず取りやすいことを基準に売場が構成されています。 売場の棚には商品を探しやすいよう、「キッチン用品」や「掃除・洗濯用品」といったPOPが掲示されています。 POPもわかりやすいように、商品を連想しやすいマークが入っているものを増やしています。 ――障害のある人や高齢者など多くの人達が使って楽しい、また便利な製品がたくさんあります。 ご存知でしたか?また障害のある人や高齢者などが使って良かったという製品があるということについて、どのように思われますか? 栗田さん:当社が想像していた以上に多くの商品を便利だと喜んでいただいていることを、嬉しく思います。 それと同時に、老若男女すべての人に利用してもらえるブランドにするという思いが、形になって届いていることを実感致しました。 これからも多くの方に喜んでいただける、質の高い、驚きと楽しさに満ちた商品をお届け致します。 キャンドゥを利用した方から、「レジやスタッフの方の対応も良い」との話も伺います。 今回、栗田さんの丁寧で温かなご対応に、〝なるほど、製品だけでなく、人の応対も素晴らしいな〟と感じました。 次頁からは、様々な方が使っておられる100円グッズを紹介します。 森川美和(もりかわ・みわ) 写真:わかりやすいPOPの一例 3ページ 作業療法士にとっての100円ショップ 福祉用具プラザ北九州(北九州市立介護実習・普及センター) 安部千秋(あべちあき) 病気や怪我などによって、普段の生活の中で行いにくい動作が生じることがあります。 そのような時、その動作を自分自身で行いやすくする方法として自助具の活用があります。 わたしたち作業療法士は、使う方一人ひとりの状態や状況に合った自助具の選定や作製を行っています。 その際わたしたちが活用するものの一つに「100円ショップ」があります。 100円ショップは「商品が安く、市販の自助具を購入する前のお試し品となる」 「品数が多く値段も安いため、自助具を作る際の材料にしやすい」 「商品の種類が多く、自助具作りや新たな活用方法のアイデアへとつなげやすい」 「店舗数が多く、簡単に商品を入手できる」 「材料だけではなく、自助具を作製する際使用する工具等の道具も同時に入手することができる」 ことから、多くの作業療法士が活用しています。 具体的な商品の活用方法としては、大きく三つあります。 一つ目は「そのままの用途で活用する」です。 麻痺や怪我で両手動作がしづらい方が片手だけでコットンに化粧水をつけることができるプッシュ式ボトル(写真1―A)、 耳が聞こえにくい方が外出先などで筆談する際に活用できるホワイトボードのメモ帳(写真1―B)、 車椅子で夜間外出する際にライトとして活用できる自転車用ライト(写真1―C)などがあります。 二つ目は「元々の用途と違う用途で活用する」です。 お湯で柔らかくなり冷えると固まるプラスチック粘土(写真2―A)は、 手の変形や麻痺のある方に合わせて自由に形が変えられるため、鉛筆などを持ち易い形にすることができます。 衝撃吸収用クッションゴム(写真2―B)は電子レンジやテレビリモコンのボタンに貼り付けることで、 目の見えにくい方や指先の感覚が鈍くなっている方でもボタンを押しやすく・見つけやすくなります。 三つ目は最も多い活用方法である「手を加えて活用する」です。 体を洗うタオルは端を輪になるよう縫い付ければ(写真3―A)、 麻痺や変形等で握る動作が行いにくい方でも輪の部分に手を入れ引っ掛けることで、背中が洗いやすくなります。 髪留めとストレッチチューブを組み合わせれば、目薬をさす自助具(写真3―B)となり、 指先に力が入りにくい方や目薬をつまみにくい方でも目薬がさしやすくなります。 木工用の棒の両端にネジ式フックを取り付ければ(写真3―C)、 手を動かしにくい方でも照明スイッチを押したりカーテンを開閉させる際に使うリーチャーとなります。 このように100円ショップ自体が作業療法士には欠かせない身近で気軽に活用できる「道具」の一つとなっています。 写真1:そのままの用途で活用する 写真2:元々の用途と違う用途で活用 写真3:手を加えて活用 4ページ 100円ショップで見つけた共用品 国際視覚障害者援護協会 芳賀優子(はがゆうこ) 私はさいたま市在住の主婦で、生まれた時から弱視です。 家から歩いて行ける距離にも、駅ビルや駅の近くにも100円ショップがあるので、日ごろから気軽に立ち寄っています。 いろいろな商品を購入していますが、今日はその中から「お気に入り」をご紹介します。  触って分かるかわいいシール 「ジェムストーンシール」「デコレーションシール」といったシールは、 キラキラ光るストーン系のものや樹脂など素材が様々で、さらに大きさや形もバラエティーに富んでいます。 「見えにくいので、似たかたちのものを識別するシール」を買いに来たことを、すっかり忘れてしまうほどの品揃えが、ワクワク感を刺激します。 触って分かるシールだけで、どれにしようかと悩んでしまうほどたくさんあるのです。 ガラケーのボタン、クリアファイル、メモ用紙、紙の資料、カードなどなど、 いろいろなものに貼って識別したり、うっかり忘れを防いだり、かわいくデコレーションしたり、形そのものを楽しんだりしています。 識別するのに輪ゴムをかけたり、クリップを使っていた時代に、 一般市場にこんなにたくさん、かわいい、触って分かるシールがあふれる時代が来ると、誰が予測できたでしょうか?  ボトル(1リットル入り) 麦茶を冷蔵保存するためのボトルを買いに行って見つけたのがこのボトルです。 夏の冷蔵庫のポケットはボトルや瓶でいっぱい!そんな時に、このボトルのスマートさはとても助かります。 またふたの開け閉めや注ぎ方が簡単なのもうれしいポイントです。すっかり気に入ってしまい、2本目も購入しました。 麦茶などの飲み物用と出汁用に分けて利用しています。 置く場所を決めたり、前にご紹介したシールを貼ったりして、間違えないように工夫しています。 また、計量カップならぬ「計量ボトル」としても、かなり重宝しています。 麦茶をつくるときはもちろん、パスタや麺をゆでる時、液体洗剤や漂白剤を使うときの水の計量にと、 本当に便利に使っています。200CCの計量カップを使うよりも、断然早いし楽ちんです。 100円ショップのいいところは、「これ便利そうだけど、私に使えるかなぁ」と思った時に、 100円という価格なら、試してみようという気持ちになれることです。 ライター、ひざ当て、ホワイトボード、色が表示してあるマーカー…、使ってみて、リピートしている商品はたくさんあります。 しかもデザインがかわいいことも大きな魅力です。 それは、障害者に特化した商品ではなく、みんなを対象にした一般商品だからこそできる価格帯であり、手軽さ、気軽さなのだと思います。 一人ひとりが、それぞれの便利グッズやお気に入りを見つけられる、一大カオスワンダーランド、私にとっての大きな魅力です。 写真1:ジェムストーンシール 写真2:ガラケーのボタンに付けたシール 写真3:ボトル 5ページ 100円ショップ探訪記 (社福)日本点字図書館 生活支援部 用具事業課 渡辺 明(わたなべあきら) 私は普段、視覚障害の方向けの商品を販売する仕事をしており、 量販店や雑貨店、インターネットなどで便利な商品を探しております。 100円ショップは、久々に見て歩きましたが、文具からキッチン用品、 収納用品、ピルケースや化粧品入れ、インテリア、工具、おもちゃの数々。 キャラクター商品もあり、ホームセンターさながらの品揃えに改めて驚きました。 今回、お店で見かけた商品と、職場の視覚障害の女性職員数名に尋ねた 100円ショップの利用方法やお勧め商品の話を織り交ぜてご案内いたします。 同僚の職員が購入するものとしては、タッパー、ラップ、ティッシュ、絆創膏、 付箋紙、封筒、紙袋、折り紙、そして晴眼者への心遣いでボールペンなど。 多くは消耗品で、安価なところが魅力のようでした。 利用方法を尋ねると、紙袋の購入では、冷凍庫に入れるものに点字を貼るときに ビニールの保存用の袋だと剥がれてしまうので、紙袋を使用する。 簡易のティーバッグになるフィルターの購入は、茶がら、出汁がらの片づけが簡単で調理に便利とのことでした。 晴眼者に比べて実用性が高いことと、生活の工夫があるように感じました。 次に、私が見た商品の中からいくつかご紹介します。 ユニバーサルデザインとしても面白いと思ったのは、「ボトルマーカー」です。 これは、会合などで同じペットボトルが配られたときに、自分のものとわかるように付ける印ですが、 人の識別のほかに冷蔵庫に入れたモノの識別にも利用できそうだと思いました。 色もカラフルで形はネクタイ、メガネ、リボン、ハートと4種類あります。おしゃれですし、触ってわかります。 キッチン関係では「すりきり計量スプーン」というものを見かけました。 プラスチック製の大さじと小さじの2つがセットでそれぞれスプーンの上にスライドする板がついていて、 小麦粉などをすくったあとに板をずらしてすりきりにします。 決まった量が簡単に計れることは調理のときに便利だと思います。 文具関係では、一般の文具のほか、鈴やリフレクター(反射板)などがありました。 アクセサリーとしての使用のほか、鈴をつけておくと、ものを落とした時に気づきやすいですし、 リフレクターは夜間の歩行の安全にも役立つと思いました。 その他、レンジで使う熱くならないお皿、菓子袋を閉じるクリップなど、 以前私どもで販売していた商品も100円で売られていました。 便利グッズのジェネリックでしょうか? 最後に、同僚職員に勧められて便利だと思ったものをご紹介します。 「ゴミ袋フック」というもので、キッチンの引き出し部分に引っ掛ける2個セットのフックです。 このフックにレジ袋をかけてレジ袋をゴミ袋として活用するというアイデアです。 100円ショップのメリットは安いことですが、売り切れになることもあります。 便利グッズに出会うタイミングもあるようです。そして『ウインドウショッピング的なお買い物は、 友達や同行援護の晴眼者と一緒に行って「掘り出しもの」を見つけている』と、利用度の高いユーザーは話していました。 写真1:ボトルマーカー 写真2:ゴミ袋フック 6ページ 脆弱皮膚の私が見つけた100円グッズ NPO法人表皮水疱症友の会DebRA Japan代表理事 宮本恵子(みやもとけいこ)  表皮水疱症であることの不便 自分が表皮水疱症という、生まれた時から脆弱な皮膚を持って生きてきて、病気と闘う毎日に明け暮れていると、身の回りのささいな不便さには、案外気がつかないものです。 というより、出来ないことは仕方がない、無理なんだから諦めよう、と言う幼少時からの刷り込みが影響しているのだと最近気がつきました。 一体、私には何が出来ないというのでしょうか。 表皮水疱症とは、皮膚の表皮と真皮を頑強に接着させるタンパク遺伝子に生まれつきの欠損があるため、少しの刺激や摩擦で全身の皮膚が簡単に剥がれてしまうのです。 しかも皮膚の一部である爪も欠落しているので、指に力も入らず、日常で使うことの多い瓶やペットボトルのキャップを開けることから、 平面にあるコインや書類は掴めないし、引っ張ったり、つまんだり、ねじったりという指先の機能は、ほとんど用をなしません。 加えて、私は重症型。両手の指すべてが癒着し全指機能全廃という立派な障害者なのです。  不便解消の小さなアイデア1 そんな私が身の周りで使うチョット便利かもと、100円ショップで見つけたものがあります。 医療材料の細々としたものを収納できる入れ物として重宝しているのがワンプッシュボックス。(写真1)なんと蓋の一角を軽くプッシュするだけで蓋が開閉できる嬉しい手軽さ。 私は、毎日水疱を潰す替え刃メスの廃棄箱として、また細々としたテープや酒精綿などの小物入れとして使っています。  不便解消の小さなアイデア2 お菓子や薬の箱、文房具の箱、あの硬い紙を開けるのは到底無理。難儀で不便の典型です。 そんな時見つけたのが、自立タッパー。これは蓋を軽く開けられ密閉できます。 箱入りの物を買ったら、すぐに主人にこのタッパーへ入れ替えて貰います。 中身も見えて、力も要らない、積み重ねもできるので、食品用に、医療材料用に、お菓子用に、どこにでも並べて置いています。 いちいち、カッターやはさみでこじ開けることもなく、いちいち主人に頼むこともなく、そのストレスがなくなる意味でも重宝しています。  不便解消の小さなアイデア3 たとえば机の引き出しから物を取り出したり、掴んだりすることにも難儀してしまいます。 そこで、スチール製の本棚にマグネットフックを何個もくっつけておきます。 ふだん使うことの多い小物をぶらさげたり、通院の予約表やメモ書きなどの留め具にしています。 探す手間なく、すぐに手に目にできることで、とても快適です。デスク回りはもちろん、台所にはキッチンツールがずらり。 このフック付きだと、フックの部分を指で掴みやすいことから、平面のフックよりも使い勝手がいいのです。 写真1:ワンプッシュ式のクリアボックス 写真2:軽いタッチで蓋が自立し、取り外し不要 写真3:掴みが便利なマグネットフック 7ページ 100円ショップの補聴援助グッズ (一社)全日本難聴者・中途失聴者団体連合会 小川光彦(おがわみつひこ) よい製品でも、普段持ち歩きしないものは、いざというときに使われません。 かといって、カバンに入れて持ち歩いていると、紛失しがちです。 その点、100円ショップの製品は気軽に使えるので重宝します。 聴覚障害の立場では次のような製品が役に立っています。  1 筆談用ホワイトボード 筆談に便利なホワイトボードが各種あります。 ボードの大きさ、ペンの色や太さ、消すためのイレーザーなど、バリエーション豊かです。 いろいろ欲しくなるので100円では済まないかも?。 個人で使うにはB5からA4の大きさのものが使いやすく、書きやすいです。 女性は普段使うバッグなどに入る、ぎりぎりの大きさのものがよいかもしれません。 大きくても薄いので、あまり邪魔になりません。 ポイントは汚れに気をつけること。インクがスス状にはげるので、取り扱いにやや注意が必要です。 書き終わったらすぐペンのキャップをかぶせましょう。読み終わったらきれいに消しましょう。 このボード、100円ショップにある材料で自作もできます。 聴覚障害者団体や要約筆記サークル等で、カラフルに表装した携帯用二つ折りボードを販売しているところがあります。 磁気で書いたり消したりできる磁気ボードもあるので使ってみてください。  2 補聴器用電池も買える 補聴器用電池は、補聴器専門店や大きな家電店、量販店で販売しています。 聞こえにくい方には切実に必要なもの。いつもスペアを用意するようにしています。 それでもうっかり、電池を切らしてしまうことも。 そんなときに補聴器電池を購入できる100円ショップが増えてきています。 しかも2粒入りで100円と、他の店で買うより安かったりします。 ただし、使い慣れている電池とは、聞こえが変わることがあります。 購入するときは、使用している補聴器に適合する品番を選ぶのがポイント。 PR44(675)青色、PR48(13)オレンジ色、PR41(312)茶色、PR536(10)黄色、 の電池のサイズやシールの色に気をつけて購入しましょう。 PRとは空気電池です。 これらと同じサイズでLRというアルカリボタン電池も補聴器用に販売されていますが、電圧が1.5Vと高めです。 自己責任で使用してください。  3 災害対応に100円ショップ 災害時の活用もあります!被災地では流通の問題やニーズの高まり等で、必要な物品が入手しにくくなることがあります。 特に乾電池、補聴器電池、筆談用グッズなど、被災地の聴覚障害者に必要な品物を、 安価に大量に購入して送るのに、100円ショップが重宝しています! 写真は2016年4月、熊本地震が起きたときに、現地の聴覚障害者団体に送ったグッズです。 大半が100円ショップで購入したもの。緊急時に役立つところも特筆したいですね! 写真1:ホワイトボード類各種 写真2:補聴器用電池 写真3:被災地支援にも! 8ページ 100円ショップは片手マンのトレジャーランド 岡田正敏(おかだまさとし) 私は、左の手と足が思うように動かない半身マヒです。 片手マンの生活は不便な事が多いので、日頃から片手でも使える便利なモノを探しています。 そんな私にとって100円ショップはとても楽しいトレジャーランドです。 見付けたお宝は沢山ありますが、今日はその一部を紹介したいと思います。  1 ワンプッシュ商品 ワンプッシュで使える商品は片手マンにとって最高のお宝グッズです。 「ペットボトルキャップ」や「ウエットシートのフタ」「印鑑ケース」など片手で使える便利な物はいろいろあるのですが、 中でも私の一押しは「綿棒ケース」(写真1)です。 片手でケースを開けて綿棒を取り出す事は意外に面倒なのですが、 このケースは頭のフタを押すと中の物がセリ上がって出てきて、もう一度押すとキチンと収まります。 ビックリするほど取り出しが楽になりました。 フタは外す事ができるので、入れる時も簡単です。 綿棒の他にも歯間ブラシなども収納できるのでとても重宝しています。  2 片手で使えるホッチキス 「どこからでもとめられるホッチキス」(写真2)も私のお気に入りの一つです。 この商品は200円なのですが、用紙を手で持つ必要がないので、片手でも簡単に好きな所にホッチキス留めができる優れモノです。 土台と枠と本体の3つのパーツに分かれていて、まず用紙を土台と枠との間に挟むように置くのですが、 それぞれにN極とS極の磁石が付いているので、留めたい箇所に気持ち良くピタッと設置する事ができます。 あとはホッチキス本体を枠にはめて上から押すだけなのでとても簡単です。  3 工作用素材 片手で使える便利なモノが世の中にない時は自分で作ってしまう事も多いのですが、 その素材を100円ショップで調達する事もよくあります。 「石鹸ケース」と「シャンプーブラシ」を利用して作った「部分入れ歯洗浄固定器」(写真3)は私の自慢の一つです。 「部分入れ歯」を洗う時は、この突起の上に固定して歯ブラシでこすっています。 またこれは、少し複雑な形状の小物を固定するのに便利なので他の用途にも活躍しています。 最近のヒット作は、「検便ウンコ捕獲器」です。 これは料理に使う「穴あきお玉」と杖の転倒防止フック「杖ピタッと」を組み合わせて作った画期的グッズです。 半身マヒにとってウンコの確保にはいつも悪戦苦闘していたのですが、これで簡単にできるようになりました。 使い方はここではあえて説明しませんがご想像ください。 100円ショップは、もはや私にとって無くてはならない存在です。 これからもお宝を探し続けたいと思っています。 写真1:プッシュ式綿棒ケース 写真2:片手で使えるホッチキス 写真3:部分入れ歯洗浄固定器 9ページ 高齢の立場で利用する100円ショップ 株式会社かじワン 高齢者なんでも調査団 村田勢次(むらたせいじ)  ポケットティッシュ 日本で生まれたという歴史があるポケットティッシュは、よく街を歩いているとあちこちで配られているのが目立ちます。 いろいろな業種が広告を目的として、街頭や店舗で無料で配っていることが多く、またお店でも販売されています。 私は、以前からポケットティッシュに限らず、各種の街頭配布している人をみると大変だなあ、 配り終わらないと帰れないのだろうなと思うとついつい貰ってしまいます。 このような状況なので、ポケットティッシュが毎日2~3袋位貯まってしまいます。 皆さんも同様だと思いますが、このポケットティッシュをどのように使っていますか。 通勤時、営業時のビジネスバッグやスポーツバッグ、普段の散歩時バッグ等で持ち歩くだけでは、なかなか使いきれません。部屋での保管にも困ります。 そんな矢先、数年前ですが、偶然100円ショップで見つけたのが「ポケットティッシュケース」でした。 ポケットティッシュを袋から取り出してケースに入れると4袋でいっぱいになります。入れたティッシュの量により3段階の高さに調整できます。 まさに「小さなティッシュボックス」になります。それ以来、自宅はじめ会社の事務所でも大変便利に使用しています。 とてもコンパクトなケースなので、どこに置いても邪魔にならず、いろいろな場面で気にせず「ポケットティッシュ」を使用できるので、 大変気に入っており、毎日使っています。ぜひ皆様にもお勧めしたい一品です。 写真:ポケットティッシュケース 付箋とクリアブック 株式会社高齢社 中村みち子(なかむらみちこ) 日頃から、100円ショップをよく利用しています。 商品の種類や品数が多く、定番の他に新製品が次々と店頭に並び、見ているだけでも楽しくなります。 文具・調理用品・手芸用品・清掃用品・園芸用品・本や塗り絵など、話題の品も数多くあり、 乾電池や水切りネットなどの消耗品は安く購入できて助かります。 一番重宝しているのは『付箋』です。最近多くなった物忘れやうっかりミスの防止策として、助かっています。 サイズや色も豊富で、用が済んだ物から剥がして捨てます。 冷蔵庫の中に入っているものを付箋に書いて、扉に貼っておけば、 奥の方や高い棚にしまったものも確認できて、賞味期限切れも防げます。 貼ってある付箋を確認してから買い物に行けば、買い忘れや買い過ぎもありません。 大切な予定を忘れないために、カレンダーに書き込みますが、 付箋にも書いて目立つ場所に貼り、何重にも注意しています(笑)。 二番目は『クリアブック』(透明なビニールのポケットが10~20枚ついている)です。 それぞれのポケットに領収書やチラシ、新聞などの切り抜きを入れて、 整理するまでの間、すぐに見られるようにしています。 生活に必要なもの、使って便利なもの、楽しくなるものなど、 これからも探して活用したいと思っています。 写真:付箋とクリアブック 10ページ キーワードで考える共用品講座 第105講「100円ショップと共用品」 日本福祉大学客員教授 後藤芳一(ごとうよしかず) 100円ショップは、安い・珍しいだけでなく、普及と利用が進んだことで、利用者側の知恵を問う段階になっている。 共用品を提供する心強い場でもある。 ▼1.100円ショップの歴史と背景 均一価格の小売店自体は江戸中期(1720年代「十九文見世」)からあり、 戦前、高島屋が展開した「十銭ショップ」が今の100円ショップに近い。 その後中断し、1960年代からは処分品なども合わせて催事を巡回した。 現在の100円ショップができたのは1985年、固定常設で独自(プライベートブランド〈PB〉)商品の開発にも注力する。 低価格の訴求がデフレ消費と相まって普及し、今日的な売り方・買い方として日常に定着している。 ▼2.売り手からみると 小売(100円ショップ)、メーカ、商業集積に新しい機会を創った。 小売の業種に縛られないため間口広く商品を扱うことができ、 欠品に対する消費者の不満が限られる(逆に頻繁な来店動機になる)ことから、商品政策は自由度が大きい。 利益確保の必要性もあって、メーカと協力したPB商品の工夫が行われている。 小売と製造の直結という意味もある。 店舗が増えて小売業態としての存在感が増すにつれ、ナショナルブランド商品にとっても重要な販路となり、 商業集積にとっては広い客層を集められるキーテナントの役割も担うようになっている。 こうした動きと相まって、商品政策は100円以外の均一価格、食品、衣類に広がり、 事業形態も最寄店(例:商店街やオフィスビルのコンビニ的店舗)から大規模商業集積の大型店、 インスタと連携した発信などに広がっている。 ▼3.買い手からみると 買う場としての新しさに加え、ライフスタイルを広げる機会を創った。 第1は、買う場としての分かりやすさ(低価格、支払が明朗)である。 第2は、効率と多様性である。転居や行楽などの際に使い捨てで価格と時間を抑えられる(例:食器)。 TPOに応じた用品(例:文具)を使い分ける。 第3は、価格や品揃えの意外感が買物の楽しさをもたらす。ただ、曲がり角にもある。 第1は、安さや品揃えへの驚きは次第に薄れる。第2は、使い捨てから持たない暮らしに移りつつある。 今後は新しい生活スタイルへの展開や、すき間の不便さを埋める役割も期待される。 第1は、専門店(例:園芸)へ行かなくても、低いハードルで新分野に踏み出せる。 第2は、ある用品を別の用途に用いる(例:インテリアの金網→台所のシンク周り)。 第3は、半製品を加工することで(例:手芸用の素材(例:くるみボタン、フェルト)、容器)、自分なりの生活スタイルを作れる。 専門店(例:手芸品店)のように作例や関連用品の情報・提案がない分、構想力や独創性が必要になる。 既製品では埋められないすき間の不便さを埋める意味もある。 その結果、買う場の性格として、価格の効率や衝動買い(珍しい)→ついで買い(目的をもって来店) →目的買い(目的品のみ購入)→素材をみて創作を考える、という変化を基調に、利用者の事情で使い分けることになる。 ファスト消費から生活スタイルを自分で創れるという達人まで、消費者の目的とレベルが試される場になりつつある。 ▼4.共用品との関係 不便さのある人にも、100円ショップは心強い支えになる。 第1は、価格や選び方が分かりやすいので、コミュニケーションに不便さのある人にも買いやすい。 第2は、品揃えが多いので自分に合う仕様の商品を選びやすい。 第3は、手頃な共用品(例:リーチャー)を見つけられる。 第4は、不便さのある本人や専門家(例:作業療法士)が素材を求めて自助具を作る。 第5は、本格的な補装具を調整する前に仮に作って試す。 第6は、本人と支援者(例:家族、専門家)が商品や素材を見て相談し、生活と用途を想定しつつ支援方法を考える場として活用できる。 流通にネットの比重が増すなか、100円ショップは共用品が見つかる、共用品を作れる、対応を考えるリアルの場として不便さ対応の心強いインフラになる。 よってモノ、サービス、生活スタイルの各場面において、100円ショップには共用の性格がある。 11ページ 第19回共用品推進機構活動報告会報告 2018年7月11日(水)、東京ドームホテル(東京都文京区)で、第19回共用品推進機構活動報告会を開催しました。 今年のテーマは「共に働く、共に創る~誰もが活躍できる社会を目指して~」。 当日は、法人賛助会員並びに関係者87名の出席をいただきました。 講演では、NTTクラルティ株式会社代表取締役社長半沢一也(はんざわかずや)氏に、 様々な身体特性に応じた適切な配慮や支援体制等について、具体的な方法を伺いました。 またパネルディスカッションでは、「日常生活での私達の工夫~片マヒ、弱視、知的障害の立場から」、と題して、 岡田正敏氏(株式会社ぐるなびサポートアソシエ)、芳賀優子氏(社会福祉法人国際視覚障害者援護協会)、 豊島裕輔(とよしまゆうすけ)氏(NTTクラルティ株式会社)にご登壇いただきました。 「法人賛助会員等活動報告」 活動報告会を締めくくる「法人賛助会員等活動報告」では、パワーポイントや動画等を使った報告がありました。 「交流会での意見交換」 報告会終了に開催した交流会には、多くの方が参加してくださいました。 次年度はいよいよ20周年を迎えます。 今年度も『インクル』や「ウェブサイト」を通じて活動のご報告をさせていただきたいと思います。 活動報告会・交流会の様子は「共用品推進機構ブログ」で公開しています。 http://www.kyoyohin-news.org/ 写真1:活動報告会風景 写真2:「さまざまな身体特性の人たちが共に働く工夫と意義~NTTクラルティにおける障がい者雇用の取組みと課題~」と題して講演する半沢氏 写真3:パネルディスカッションの様子 12ページ ISO/TC173/SC7総会開催 5月6~10日、ケニアのナイロビで、福祉用具の規格を作成するISO/TC173の第19回総会が開催されました。 この中で、共用品推進機構が国際幹事を担当する分科会、SC7の第6回会議も同時に行われました。  新規提案について議論 本年2月に、視覚障害の人に使える取扱説明書の規格(JIS S 0043)が制定されましたが、この規格を国際規格にするため、同月ISOへ提案を行いました。 提案承認の可否については5月1日締切で投票が行われました。 賛成票は既定の割合を満たしていましたが、会議に参加する専門家を推薦した国が規定を下回ってしまい、この提案は承認されませんでした。 そのため投票の際に添付されていた投票国からのコメントを考慮しながら、この規格の今後の取り扱いについて検討しました。 また、この規格以外に、これから提案を考えている2件の規格、消費生活用製品のアクセシビリティ評価方法と不便さ調査についても、どの委員会に提案するかを議論しました。  初参加の地はアフリカ 今年の2月に前任者から国際幹事を引き継ぎ、今回、初めて国際幹事という役割のある立場で参加することになりました。 総会の開催地は持ち回りで担当しています。初めて参加する会議がアフリカのケニアで開催されると聞き、出発前から色々な心配をしてしまいました。 危機的な状況を想定しすぎたことが良かったのかもしれません。 実際に会議に参加してみると、総会で隣に座った人に英文チェックをしてもらったり、 休憩時間に、アフリカ上陸は今回が初めてだという話題で話しかけてみたりして、とても和やかに過ごすことができました。 また、資料作りに時間を取られ、幸か不幸か4日間の食事はすべてホテルの中ですませたため、治安、衛生面での心配は一切無用でした。  それぞれに文化の異なるTC 10年以上参加しているメンバーによると、このフレンドリーな雰囲気は、TC173という組織の文化ではないかとのです。 この技術委員会のテーマが福祉ということで、他とは違った温かさがあるのかもしれません。  次回会議は日本で開催予定 次回の総会は日本で開催する予定です。 今回お世話になった方々に、ぜひ日本を楽しんでいただきたいと思っています。 金丸淳子(かなまるじゅんこ) 写真1:ISO/TC173総会 会場 写真2:TC173のメンバー 写真3:メンバーの講演(山内繁(やまうちしげる)氏・左)手話通訳もありました(右) 13ページ アクセシブルデザインについて 米国オレゴン州 ジャスミン・ダドリー 子供の頃、私は「星に手を伸ばす」ことを教えられました。 人は時には「障害物」を乗り越えて、人生の目標を達成しなければなりません。 しかし、肉体的な障壁が目標の達成を妨げるのであればどうなるでしょうか。 共用品推進機構(以下、機構)での3ヶ月間のインターンシップで、 私は電車、フェリー、タクシー、バス、飛行機のような様々な交通手段を使って8つの都府県に旅行しました。 また、異なる組織、企業、地域社会の方を訪問し、会うことで、アクセシビリティを高める必要性について学びました。 たとえば、交通機関を利用するとき、能力に影響を及ぼす様々な要因(身体的または精神的障害)があることを知り、 すべての人々に簡単なアクセスと使いやすさを提供することの重要性について考え始めました。 理想的な社会では、人々は身体的、または知的な障壁について心配する必要がないでしょう。 むしろ、性別、能力または素質に関係なく一緒に住むことができ、それぞれのコミュニティ内で、 仕事、学校、趣味などの活動への人々の参加を促進する環境にアクセスすることができます。 ユニバーサルデザインは、費用対効果が高く、すべての人にとって最大の利益をもたらすため、 このような理想的な社会を実現するための最良の解決策の1つだと私は信じています。 アクセシビリティが向上するにつれて、不便さが減少し生活の質が向上すると考えられます。 しかし、完全にアクセス可能な社会は可能でしょうか? 社会において、すべての人々が平等なアクセスと機会を持つ世界を実現することは難しいですが、 私は機構が正しい方向に進んでいて、そのような社会を生み出すように懸命に働いている、すばらしい組織の一例だと思います。 すべての人々が本当にアクセスできる社会を作り出すためには、様々な要因を含んでいます。 政治、財政、割り当てられた資源などすべて、アクセス可能な環境を作り出すことに影響を与えます。 地域によっては、アクセシブルな交通機関、施設、サービスなどは一般的でないことを知りました。 しかし、機構の継続的な研究により、バリアフリー、アクセシビリティ、ユニバーサルデザインの重要性を、 現在および将来のステークホルダー、他の組織、企業に提供できることを学びました。 私は、継続して努力することで、次の世代のために、本当にアクセスしやすく有益な社会を作り出すことができると思います。 多くの課題があるとしても、すべての人々が可能な限り最大限にアクセスでき、理解し、利用するコミュニティをつくることの重要性について、 継続して人に教え、人が意欲を持つようにし、働きかけ、励まし続けていきたいと思います。 訳:金丸淳子 写真1:アゼリーグループの職員の方々と 写真2:ジャスミン・ダドリー氏 私はダドリー・ジャスミンです。 米国・オレゴン州のパシフィック大学を卒業し、作業療法士(OT)の博士号取得のために、インターンシップで日本に来て機構で勉強しています。 冒頭の「星に手を伸ばす」ですが、私の「星」はもっと勉強して社会をより良くすることです。(2018.6月) 14ページ 公益社団法人日本リウマチ友の会第58回全国大会に参加して ~鳥取・米子市の大会参加と、境港市を訪ねて~  寛解の時代へ 日本リウマチ友の会は、毎年1回、全国大会を各地で開催しています。 今年は、漁場に恵まれ緑豊かな鳥取県米子市。今年は400名の参加がありました。 大会は、リウマチ患者さんの体験に基づく発表、リウマチ治療の現在と未来、リウマチ診療の医療連携について講演会が行われ、 早期診断の重要性や寛解の時代に向けた最新の情報が得られました。 難病リウマチへの理解を広め、福祉の向上を図り、会員相互の親睦を深めることができたとても有意義な大会でした。 公益社団法人日本リウマチ友の会 TEL:03-3258-6565 URL:http://www.nrat.or.jp/ 写真:久しぶりの再会に話が弾んだり、情報交換を行ったり、心豊かな会員の皆さんが集う会場風景  境港市の細やかな配慮 鳥取県は、県を挙げてユニバーサルデザインに取り組んでいます。 リウマチ友の会の皆さんも良く利用されるUDタクシーや、 7月にリニューアルオープンした境港市の「水木しげるロード」には、 全ての人にやさしい工夫を目指して、たくさんの配慮があります。 写真:様々な場所に“点字”がある「水木しげるロード」 写真アップ1:触って分かるかも? 写真アップ2:ココにも点字 15ページ 日本AED財団の目指すこと 一般財団法人 日本AED財団(京都大学健康科学センター) 石見 拓(いわみ・たく) 日本で一般の方がAED(自動体外式除細動器)を使用できるようになって14年。 日本は世界でも有数のAED大国になりました。しかし、まだ多くの課題が残されています。 AEDに関わる課題を解決し、心臓突然死を減らすことを目指して日本AED財団を立ち上げ、取り組みを進めています。  突然の心停止とAED 日本では毎年約7万人もの方が心臓突然死で亡くなっています。 突然の心停止からの救命には迅速な心肺蘇生とAEDを用いた電気ショックが必要です。 心停止となってから電気ショックまでの時間が1分遅れるごとに救命率はおよそ10%ずつ低下します(図)。 救急隊や医師を待っていては命を救うことはできません。 突然の心停止を救うことができるのは、その場に居合わせた「あなた」なのです。  救命のためにできること 心停止の現場に居合わせた人が胸骨圧迫を行うことで約2倍、AEDを用いた電気ショックでさらに2倍、救命率が高まります。 心肺蘇生、AEDによる電気ショックを受ける人の数は年々増加していますが、未だにAEDによる電気ショックが行われたのはたった4.5%です。 心停止かどうか判断に迷っても、胸骨圧迫やAEDの使用を開始することが重要です。 AEDは電気ショックの必要性を自動的に判断して教えてくれます。 もし現場に遭遇したら勇気を持って行動を起こしてください。  日本AED財団が掲げる3つの「S」 我々はAEDの使用を広げるための仕組み、仕掛けとして3つの『S』を提案しています。 一つ目のSはスクールです。全ての学校において、心肺蘇生とAEDについて実技を交えて繰り返し学べるようにすることを求めています。 小学生から『発達段階に応じて』繰り返し学ぶことで、心肺蘇生とAEDに関わる知識が定着し、 いざというときに行動を起こすことが当たり前の社会が実現すると考えています。 二つ目のSはスポーツです。東京マラソンに代表される市民参加型マラソンでは、 数万人に1件の割合で心停止が発生していますが、その大半が救命されています。 AEDと救命の体制をきちんと備えておくことでスポーツ中の心臓突然死もゼロを目指せるのです。 2020年の東京オリンピック・パラリンピックまでにスポーツ現場におけるAEDを用いた救命体制を確立し、 「安心・安全なスポーツ環境の整備」をレガシーの一つにしていくべきだと思います。 三つ目のSはソーシャルネットワークの活用です。心停止の現場と救命の意思を持った市民救助者、 現場付近にあるAEDの情報をスマートフォンで繋ぐ試みを進めています。 一昔前は、一旦心停止になった人を救うことは困難で、救命は奇跡でした。 しかし、AEDが普及してきた現在、突然の心停止の大半が救命できる社会の実現は夢ではなくなりつつあります。 誰もが、AEDを用いた救命処置を実施することが当たり前の世の中を目指しています。 写真1:心停止後の時間と救命率 写真2:学校で学ぶ心肺蘇生とAED 16ページ 【事務局長だより】 100円ショップの変化 星川安之 100円ショップがいつ頃からあったのかとWebで見てみると「日本国内においては古くは享保7年.8年(1722年.1723年)頃から江戸で流行した」とあった。 さらに今のスタイルの原点は、アメリカの10セントを参考に、10銭ストアが日本では広がったことと書かれている。 4月から共用品推進機構にアメリカのオレゴン州からインターンシップで来ている作業療法士のジャスミンさんに、 アメリカにも100円ショップがあると聞き、日本のアイディアがアメリカに渡ったと、誇らしく思っていたのだが…。 さて今回の100円ショップ特集、いつかインクルで特集したいと思っていたテーマである。 1991年、共用品を推進する市民グループが発足した当初から議論になっていたのが、 共用品は「デザイン的にも優れていることが条件」だという派と、 そうではなく「安価なものでも障害の有無、年齢の高低に関わらず共に使えること」が重要であるという派で、 両者はしばしば議論を闘わせた。 デザイン系の多くは前者派、私を含む庶民は後者派であった。 デザインが良くなければ、共用品を広げる力や継続する牽引力を持たないし、 そもそもデザインは形だけでなくそのプロセスにあるというデザイン派と、 そうは言っても、値段が高くなれば庶民は手が出ないという庶民派の主張であった。 議論は、会議の場、その後の懇親会の場などで、繰り返し行われた。 実はお互い、腹の底では相手の主張も理解していながら、デザインが良く、 誰もが購入できるという落としどころの具体策に辿りつけずに、議論は結論がでないままに、続きはまた次回となっていた。 日本作業療法士協会の中村春基(なかむらはるき)会長と講演会や仕事を一緒にさせていただくようになり、 作業療法士の方々が、100円ショップで売られているモノを利用して高齢の方や障害のある人達が使える自助具を作ったり、 最近では商品そのままで自立を支援する自助具になるものも多くあると聞いた。 1980年代から広がってきた現在の形態の100円ショップ。 当初は、価格は安いが一時的に売られているモノ、デザインや品質は二の次という印象があったが、 30年の時を経て、今では日本の大手日用品メーカーも100円ショップ用の製品を作る部署も設けられる時代になった。 以前議論していたデザインと価格の議論が、解決されたものも数多く継続して売り場に並ぶようになってきた。 共用品は多くの人の知恵と実行で、100円ショップを含め、多くの異なる流通で増えている。 次なる課題は、その情報をいかに必要な人に届けるかである。これにも知恵と実行が求められている。 共用品通信 【会議】 第17回臨時理事会(6月14日) 第12回定時評議員会(6月14日) 第18回臨時理事会(6月14日) 【講義・講演】 NEDOで講演(5月24日、星川) 早稲田大学藤本研究室・倉片研究室講義(5月24日、星川) 日本大学芸術学部 講演(5月28日、星川) 武蔵野美術大学 講座(6月1日、星川) 岡山県立西大寺高校 共用品講座(6月12日、森川) 愛知県犬山市立犬山中学校 共用品講座(6月21日、森川) 【報道】 日本経済新聞 「共用品パンフ」(5月26日) 日本経済新聞 「切符と改札」(6月23日) 時事通信社 厚生福祉「高橋秀子さんから聞いた話」(5月8日) 時事通信社 厚生福祉「ATCエイジレスセンター」(5月25日) 時事通信社 厚生福祉「介護という言葉」(6月1日) トイジャーナル5月号「UDタクシー」 エルダリープレス 高齢者住宅新聞 5月号「楽しく映画鑑賞」 エルダリープレス 高齢者住宅新聞 6月号「シルバー人材が活気の源」 アクセシブルデザインの総合情報誌 第115号 2018(平成30)年7月25日発行 "Incl." vol.18 no.115 The Accessible Design Foundation of Japan (The Kyoyo-Hin Foundation), 2018 隔月刊、奇数月に発行 編集・発行 (公財)共用品推進機構 〒101-0064 東京都千代田区神田猿楽町2-5-4 OGAビル2F 電 話:03-5280-0020 ファクス:03-5280-2373 Eメール:jimukyoku@kyoyohin.org ホームページURL:http://kyoyohin.org/ 発行人 富山幹太郎 編集長 山川良子 事務局 星川安之、森川美和、金丸淳子、田窪友和 執筆  安部千秋、石見拓、岡田正敏、小川光彦、後藤芳一、     ジャスミン・ダドリー、中村みち子、芳賀優子、宮本恵子、     村田勢次、渡辺明 表紙デザイン ㈱グリックス 編集・印刷・製本 サンパートナーズ㈱ 本誌の全部または一部を視覚障害者やこのままの形では利用できない方々のために、 非営利の目的で点訳、音訳、拡大複写することを承認いたします。 その場合は、共用品推進機構までご連絡ください。 上記以外の目的で、無断で複写複製することは著作権者の権利侵害になります。