インクル121号 2019(令和元)年7月25日号 特集:共生社会の実現を伝える媒体 目次(Contents) 障害者権利条約の実現のために ―情報アクセスとパラレルレポート― 2ページ 利用者が選択できる媒体での情報提供 4ページ 日本点字図書館が発行している媒体 5ページ 点字の新聞、『点字毎日』 6ページ 全日本ろうあ連盟の情報発信について 7ページ 共生社会の実現を伝える媒体(全難聴) 8ページ 「その人らしい暮らし」支える介護・福祉用具を伝える ~シルバー産業新聞~ 9ページ 月刊『福祉介護テクノプラス』 10ページ キーワードで考える共用品講座第111講 「障害のある人に情報を伝える媒体」 11ページ 地域における良かったこと、イラストにして公開! 12ページ 新規法人賛助会員のご紹介 14ページ 日本リウマチ友の会 全国大会にて アンケート調査と製品展示を実施 15ページ 事務局長だより 16ページ 共用品通信 16ページ 表紙:東京・杉並区の良かったこと調査イラスト 2ページ 障害者権利条約の実現のために ―情報アクセスとパラレルレポート― 日本障害者協議会副代表・情報通信委員長 薗部 英夫(そのべ ひでお) 〈1〉つながることでみえてきた  今は昔。パソコンがみるみる普及し、Windows 95が話題となった頃の話です。 インターネットが台頭して、世界がつながってしまうはじまりの頃でした。 わたしたちは、障害のある人がパソコンやインターネットを利活用できるための支援グループ=〝パソコンボランティア(パソボラ)〟に夢中でした。  〝1200ボー〟の音響カプラ(電話の受話器に音響結合してデータ通信を行う通信機器)を付けてパソコン通信すると、パソコンの向こうにいる人と人とがつながりました。 でも、パソコン操作は難しく、「パソコン教室」でたくさんの人が習っていた時代です。障害があれば、一人ひとりの困難は山ほどあったのです。  「助けて!」の一声から、インターネットでつながっているパソボラたちは、すぐに情報を共有して、 「助け手」に手を挙げました。困難な状況を知るためにはお宅訪問もしました。パソボラの前ではさまざな「敷居」は取り除かれたのです。 そして、パソコンが利用できるようになった障害者は、つぎには自らが「助け手」となって支え、支えられたのです。 日常的なフツーのつながりから、障害理解もすすみました。  でも、ICTを支援するための障害者制度はほとんどありませんでした。必要な制度をつくるために障害者運動も必要でした。 あれから4半世紀。わたしたちは今、障害者権利条約を手にしています。 〈2〉権利条約の肝は「他の者との平等」なアクセス権  障害者権利条約は、2006年に国連総会で採択され、現在177か国が批准し、日本は141番目の締約国となりました。 25項目の前文に50条の本文で構成されています。第1条「目的」では「障害の社会的把握(社会モデル/人権モデル)」を、 第2条「定義」では、「コミュニケーション、言語、差別、合理的配慮」を定義しています。 第3条「一般原則」は、「尊厳、非差別、インクルージョン、アクセシビリティ」を位置づけています。  とりわけ「アクセシビリティ」は、「他の者との平等(=同年齢の市民との同等の権利)」をくり返し強調する権利条約全体を貫く考え方です。 権利条約には、特別な規定として、「意識向上」(第8条)とともに第9条で「アクセシビリティ (英文=Accessibility、公定訳=施設及びサービス等の利用の容易さ)」が明記されています。 さらに第21条で「表現と意見の自由、情報へのアクセス」を位置づけているのです。  第9条の政府公定訳を一部紹介します。 1 締約国は、障害者が自立して生活し、及び生活のあらゆる側面に完全に参加することを可能にすることを目的として、 障害者が、他の者との平等を基礎として、都市及び農村の双方において、物理的環境、輸送機関、情報通信 (情報通信機器及び情報通信システムを含む。)並びに公衆に開放され、又は提供される他の施設及びサービスを利用する機会を有することを確保するための適当な措置をとる。 2 締約国は、また、次のことのための適当な措置をとる。 (f)障害者が情報を利用する機会を有することを確保するため、障害者に対する他の適当な形態の援助及び支援を促進すること。 (g)障害者が新たな情報通信機器及び情報通信システム(インターネットを含む。)を利用する機会を有することを促進すること。 〈3〉権利条約実現のためのシステムを活用して  権利条約には、「締約国報告」を義務づけ、条約実行を監視する強力なシステムがあります。これにより、 日本の審査が2020年秋に実施される予定です。その後国連より日本の問題点や改善点を指摘する総括所見(勧告)が出されます。 そして、この審査では、国の報告だけでなく、市民社会組織(障害者団体など)からの実態や問題点をリアルに指摘する 「パラレルレポート(パラレポ)」が重視されているのです。 この「パラレポ」を障害者団体でひとまとまりになって作成し、国連に届けようと日本障害フォーラム(JDF)がよびかけ、 日本障害者協議会(JD)など13の構成団体からの意見を集め、2年間議論して、2019年5月にまとめました(JDFホームページ参照)。  たとえば、「課題」では、 ①アクセシビリティ概念の理解が不足している、 ②アクセシビリティ要件を定めた公共調達の法制度がない、 ③商品開発や施設整備における障害当事者参画が進んでいない、 ④情報アクセシビリティの権利が明記されていない、 などが具体的に指摘しています。  「求められる勧告案」として、 ①障害者に関わる包括的・基本的な法律の中に、アクセシビリティの概念を導入すること、 ②障害者理解を促進するために、行政、事業者等あらゆる関係者へ研修を義務付けることなどを記述しています。 *  権利条約で位置づけられたアクセシビリティの保障とICTの新技術や支援機器は、 日常生活はもとより、教育、労働、リハビリテーション等あらゆる場面で活用されることが期待されます。 でも、必要とする人にはいまだに届いていないのが現状です。権利条約の実現にむけて多くのみなさんとともにアクションしていきたいと思います。 写真1:90年代のパソボラ報道 写真2:パソボラのとりくみ 写真3:障害者権利条約 写真4:国連・障害者権利委員会の審査(ノルウェー)を傍聴(2019年3月) 4ページ 利用者が選択できる媒体での情報提供 (社福)日本盲人会連合 情報部長 三宅 隆(みやけ たかし)  日本盲人会連合(日盲連)は視覚障害者自身の手で、〝自立と社会参加〟を実現しようと組織された視覚障害者の全国組織です。 1948(昭和23)年に結成された、都道府県・政令指定都市における61の視覚障害者団体の連合組織で、 国や地方自治体の視覚障害者政策―人権、福祉、教育、職業、交通問題、情報保障、災害対策等―の立案・決定に際し、 視覚障害者のニーズを反映させるため、陳情や要求運動を行っています。  主な事業として、(1)全国の視覚障害者団体に対する連絡及び助成事業、(2)点字図書館、点字出版所、録音製作所の設置運営、 (3)視覚障害者やその家族からの生活相談事業、(4)点字ニュース即時提供事業、 (5)福祉用具の販売斡旋等事業、(6)福祉一般に関する調査研究、(7)情報宣伝及び文化活動、 (8)あん摩・指圧・はり、きゅう等の生業の安定及び職域拡大のための調査研究並びに医療保険取り扱い等の経営指導、 (9)国内外の関係団体との相互交流、協力事業を行っています。  本連合では、視覚障害者を含め多くの方々に向け、点字、音声、拡大文字、メール、ホームページなど、さまざまな媒体により、 視覚障害者に関連した情報を提供しており、主なものとして以下のものがあります。 (1)点字JBニュース:月曜から金曜まで、点字印刷した物または点字データを添付したメールにより視覚障害者向けに発行。 視覚障害者の新聞情報へのアクセスを支援する目的で、1990年より厚生労働省の補助事業として実施されており、 一般紙のその日の朝刊から選んだ記事と独自の福祉関連記事の点訳データを、全国55か所の地域実施機関に配信し、 点字印刷をして読者に郵送。これに加えて、2000年からは、電話での自動読み上げによる音声化、 2003年にはインターネットを介して視覚障害者個人へのデータ提供を開始しています。 (2)点字情報誌「点字日本」・音声情報誌「日盲連アワー」: 日盲連の活動状況や文化・スポーツ行事のご案内、その他福祉関係情報、関係資料等を幅広く掲載。 (3)インターネット版音声情報誌「日盲連 声のひろば」: お役立ちトピックや、娯楽・趣味といった視覚障害者を含めた多くの方々の生活を豊かにする話題など、 ゲストの『声』を交えて紹介する毎月発行のWeb情報誌。 (4)墨字機関誌「愛盲時報」:本連合の活動状況を中心に、さまざまな福祉情報を掲載。 本連合では、見え方や利用のしやすさについて視覚障害者の個々の状態にあったものを選べるよう、複数の媒体で提供しています。 また、墨字やインターネットを利用し画像も含めた媒体での提供も行うことで、視覚障害者も含めた多くの方々に共通の情報を届けることができます。 私は、1つの情報が提供されたときに、健常者だけが、あるいは視覚障害者だけが入手できるのではなく、 個々のニーズにあった形での提供方法が複数存在すべきだと考えています。昨今、情報のバリアフリー化が言われていますが、 本連合では、今後も選択できる媒体での情報提供に努めてまいります。 写真:日本盲人会連合で発行している点字・音声・墨字の刊行物 5ページ 日本点字図書館が発行している媒体 (社福)日本点字図書館 伊藤 宜真(いとう のぶざね) 日本点字図書館のあらまし  当館は昭和15年に創立。点字図書約2万1500タイトル、録音図書約1万7300タイトルを有するわが国最大の点字図書館で、 利用登録者は約1万3000人に上ります。また視覚障害者生活用具事業、自立支援事業、ふれる博物館などを展開し、 視覚障害者の豊かな生活に貢献できるよう努めています。近年では厚生労働省からの補助金により、 ネット上の点字図書館「サピエ図書館」のシステムを管理しています。 日本点字図書館が発行している媒体  実は全国に32万人いる視覚障害者の中で、点字が読める方は約一割です。ですので、当館の発行物は点字だけでなく録音物や墨字(目で読む文字)、 また昨今はインターネットやSNSを利用している視覚障害者もいらっしゃるので、それらを使った情報発信もしています。 利用者へのお知らせは  具体的には、新しく蔵書として受け入れた点字図書・録音図書の新刊案内を主な内容とした「にってんブレイル」(点字、年間1500部)、 「にってんボイス」(点字、録音、墨字、サピエ図書館、年間4100部)は、毎月交代(隔月刊)で発行しております。  月刊録音雑誌「にってんデイジーマガジン」(録音、サピエ図書館)は、毎号30時間以上の内容を収録しています。 この中には月刊『文藝春秋』全文や、東洋医学関係情報、生活関連情報、本の情報また当館からのおしらせなどを収録しており、 個人利用者6000人以上、団体250か所に送付しています。またサピエ図書館にもアップしており、 視覚障害関係では最も多くの人に読まれている情報媒体といえるでしょう。  一方、用具事業では新製品や体験会、イベントの紹介に、メーリングリスト、フェイスブックを駆使した広報活動を行っており、 メーリングリストの会員は4300名に上っています。 広い広報活動は  当館は、社会の各方面からのご支援により支えられており、その方たちへの事業報告を兼ねて、 「にってんフォーラム」(墨字)というA5判の小冊子を季刊で発行しています。 内容は当館の事業あるいは関連する事柄の紹介、イベントの予告と報告、利用者・ボランティアの声、 用具の新製品紹介などです。送付先は関係官公庁、助成団体、ご支援くださっている企業、 ご寄付くださっている方々などで、毎号約6000部を発行しています。  不特定の方にはツイッター、ホームページを利用してお知らせをしています。 旬の情報を発信するツイッターは昨年度600件の発信を行い、3000名のフォロワーを獲得しています。 ホームページも毎月の定期更新の他、随時更新を行ない、常に新しい情報を掲載することを心がけています。 昨年度の訪問者数は68万件ありました。  これらツイッター、ホームページで気をつけていることは、 視覚障害者が音声読み上げソフトを利用してアクセスしていることを意識することです。 漢字の表記では誤読しないように、たとえば「貸出」は「貸し出し」、「行(おこな)って」は「行なって」というように表記しています。 また、画像についてもオルト属性で代替テキストによる説明を記述しています。 写真:にってんデイジーマガジン 6ページ 点字の新聞、『点字毎日』 毎日新聞社点字毎日編集部 濱井 良文(はまい よしふみ)  毎日新聞社が発行する週刊の点字新聞「点字毎日」は、視覚障害者の間で「てんまい」の愛称で長く親しまれてきた。 創刊したのは1922(大正11)年。ラジオ放送もまだ始まっていなかった時代のことだ。「発刊のことば」には、次のような一文がある。  「失明者に対して自ら読み得る新聞を提供し、本社発行の各種の新聞とあいまちて、新聞の文化的使命を徹底せしめんとするにほかありません」  当時の大阪毎日新聞社が、点字という手段を用いて目の見えない人にも新聞購読の機会を提供したのは、今でいう「共用サービス」に連なる、先駆的な取り組みの一つと言える。  初代の編集長である全盲の中村 京太郎(なかむら きょうたろう)は、無料配布を考えた社の上層部に対し 「たとえ1銭でも5銭でも読者からは取るべきだ。点字新聞発行の目的は、社会から尊敬される独立した盲人をつくることにある」 と強く迫ったという逸話が残っている。購読してもらっている読者への責任があるからこそ、97年が経った今も変わらず発行しているのだと受け止めている。  点字毎日の紙面内容は、一般紙である毎日新聞の内容を点字にそのまま訳したものではない。独自の編集部で取材・編集に当たっている。 いわば視覚障害者に向けた「専用品」「専門紙」である。あるいは、新聞には全国共通の紙面と共に地域面があるように、 読者により密接な情報を届ける役割を担ってきた。「共用品」とは反対の位置づけだ。  かつては点字版しかなかった媒体は今、活字版、音声版、点字データ版と多様化しており、毎日新聞のサイトでも一部の記事が読める。  折しも、先の通常国会で「読書バリアフリー法」が議員立法で成立した。 そこでは「障害の有無にかかわらず全ての国民が等しく読書を通じて文字・活字文化の恵沢を享受することができる社会の実現」 という理念が示されたところだが、既に一定の役割を果たしてきたと自負している。  とはいえ、視覚障害者への情報保障という福祉的な側面と、商業ベースでの情報発信の垣根が、 今日の技術を使えば容易に乗り越えられ、あいまいになる中、立ち位置が難しくなっているという感覚をしばらく抱いてきた。 ボランティアによる情報支援が盛んな視覚障害者を取り巻く環境では、情報にお金を払ってもらうというのがなじめなくなっているのだろう。  ちょうど、スマホ一つで多くの人がネットの世界にさまざまな情報を発信している今日、 真に価値ある情報を生み出し、無限とも思われる数の中からそれを選んでもらって対価を得ようと、 試行錯誤を繰り返している昨今のメディア業界と似たような構図にあるといえまいか。  やがて折り合いがつくことを願いつつ、当面、創刊100年という大きな節目を迎えられるよう、これまでと同じ歩みを重ねていきたい。 写真:「点字毎日」の各媒体 7ページ 全日本ろうあ連盟の情報発信について (一財)全日本ろうあ連盟 事務局長 久松三二(ひさまつ みつじ) (一財)全日本ろうあ連盟について  当連盟は、全国47都道府県に傘下団体を要する全国唯一のろう者の当事者団体です。  ろう者の人権を尊重し、文化水準の向上を図り、その福祉増進のため、 言語である手話の普及とろう者に対する理解啓発を含めたさまざまな活動を行っています。 情報発信媒体について  きこえない人々のためのジャーナルとして「日本聴力障害新聞」を毎月発行しています(タブロイド紙12頁)。 当連盟と同様、70年以上の歴史があり、国内外のろう者や難聴者、手話に関する記事、連盟の活動に関連したさまざまな出来事を伝えています。 ある時は差別や人権侵害の事実を掘り起こし、当事者でしか語れない視点で問題提起することで、 紙面を通じてきこえない人々への理解を読者・市民に広げ、よりよい社会を目指す一役を担っています。 本年7月号からはAR動画を導入し、手話言語で掲載内容を知ることができる試みを始めました。  また、季刊誌として「季刊みみ」を年4回発行しています(B5冊子88頁)。  「日本聴力障害新聞」で伝えた記事をさらに深く掘り下げた特集、連載記事、対談など、 じっくりと読み応えのある内容となっています。  旬な話題はホームページに「写真ニュース」等を掲載します。当連盟の今の動きを知ることができます。 またSNSを利用した情報発信も行っており、Facebook、Twitter、LINE@を利用しています。特にLINE@では、 当連盟から発行する書籍の情報や、会員以外の一般参加が可能なイベントのお知らせ、さまざまな募集などに効果があります。  総じて視覚的な読みやすさを重視しており、注目してほしい話題には手話動画の配信も行っています。 手話言語関連の書籍  手話言語やろう者をめぐる諸問題を、手話言語を学ぶ人や一般の人たちに正しく理解してもらう啓発活動の一環として、出版事業を行っています。  『わたしたちの手話』シリーズは、1969年に第1巻を発行以来、ろう者の日常生活に用いられている手話言語を描き、広く親しまれています。 日本手話研究所で決定される新しい手話を、その中から厳選し、毎年1冊にまとめ発行しています。  手話言語初心者のための『はじめて出会う手話』や東京オリンピック・パラリンピックに向けた『使える!スポーツ手話ハンドブック』も人気です。 ろう者の差別事例とその対応方法をまとめた『手話でGO!GO!合理的配慮~障害者差別解消法でやるべきことを考える~』は、 ろう者の特性や不便さに気づくことができ、きこえる人もきこえない人もともに学べる実践集となっています。 (一財)全日本ろうあ連盟ホームページ https://www.jfd.or.jp/ 写真1:日本聴力障害新聞・季刊みみ 写真2:『手話でGO!GO!合理的配慮~障害者差別解消法でやるべきことを考える~』(900円+税) 8ページ 共生社会の実現を伝える媒体 (一社)全日本難聴者・中途失聴者団体連合会(全難聴) 常務理事 湯浅 はるみ(ゆあさ はるみ)  全難聴は中途失聴者、難聴者の全国組織です。全難聴が発行する「難聴者の明日」は年4回の発行で、 本部や加盟協会の活動状況を知ることができますが、購読している会員しか情報が得られない欠点があります。 その欠点を補うべく、ホームページが最近リニューアルされ内容が充実してきました。 会員以外の一般の人たちも気軽に閲覧できるようになり、本部の様子がよりわかりやすくなってきたと思います。  また、今年6月に全難聴公式LINE(ライン)が始まりました。本部からの情報がより簡単に伝わるようになり、 全難聴を身近に感じた会員もいるのではないでしょうか。公式ラインを始めて最初の日の登録者が十数名だったのが、 公開して1週間経たないうちに登録件数が100名を超えたそうで、情報獲得手段を知っている人が多いことと普及の速さに驚きを感じます。 情報通信技術(ICT)の進展で、中途失聴者、難聴者はネットの恩恵を大きく得ていると言えるでしょう。  各地の協会や要約筆記サークル、聴覚障害福祉関係の行政団体事業体など多岐にわたる情報を検索、獲得、 共有しやすくなりました。中途失聴者、難聴者にとっては、音声よりも視覚情報の方が確実です。 一昔前までは新聞やテレビ、書籍などが私たちの主要な情報獲得手段でしたが、今ではネットのおかげで、 いろいろな分野の情報が手に入りやすくなり、選択肢も増えてきました。  全難聴が現在、力を入れているのは、自動音声認識による文字付き電話の実証実験です。 聴覚障害者にとって電話は使いにくく不便です。日本語を話せる聴覚障害者の場合、 自分が話して相手の声を文字で見る仕組みがあれば、生活で困ることが少なくなるでしょう。 FAXしかなかった十数年前と比べ、はるかに便利な世の中になりました。  しかし、一方では進化しつつあるデジタル機器への対応に追いつけず、取り残される難聴者も少なからずいます。  私の地元香川の協会では、会員の半分が高齢者で、今でも携帯を持たない人が何人かいます。 会の行事案内をするにはラインが便利ですが、携帯を持たない、使い慣れていない会員にとってFAXが唯一の手段なので、 会員間に情報量の差が生じてしまうことが悩みです。  いきおい携帯に慣れない難聴者には、家族の支援が欠かせなくなることが、 自主的な社会参加への障害の一つになっているのではないかと思うことがあります。  人生半ばにして難聴になった人は、難聴年齢が遅いほど、一般社会への適応が困難になりがちです。 情報通信手段を知っている人は、情報を多く集められるので、 自分で社会参加する方法を選択・判断しやすいのではないかと考えます。  そういう訳で、デジタル機器に慣れなくて取り残されてしまう難聴者への対応を考えるのは各加盟協会単独では難しいので、 全難聴や行政、関係団体と連携を取りながら情報社会にうまく適応していく方法を、皆で考えていきたいと思っています。  高松市では今春、「手話言語及び障害のある人のコミュニケーション手段に関する条例」が施行されました。 この中に「情報通信機器の利用」という言葉が全国で初めて明記されました。 様々なコミュニケーション手段の中で、情報通信機器を上手に利用することが、 様々な障害を越えて共生社会を目指す近道になるのではないかと思います。 写真:全難聴ホームページ https://www.zennancho.or.jp/ 9ページ 「その人らしい暮らし」支える介護・福祉用具を伝える ~シルバー産業新聞~ シルバー産業新聞社 村岡 諭(むらおかさとし)  「シルバー産業新聞」は1996年に創刊し、おもに高齢者介護の仕事に携わる方々へ向けた専門紙です。 居宅介護支援(ケアマネジャー)や訪問介護、デイサービス、グループホーム、特別養護老人ホームなど介護サービス事業所・施設をはじめ、 福祉機器メーカー、医療機関、行政など、幅広い方々にご愛読いただいています。  紙面では、介護保険制度の動きや介護関連ビジネスの最新動向、現場での取り組み、 福祉用具・共用品をはじめとした高齢・障がい者に配慮されたサービス・商品の紹介など、 幅広く採り上げています。共用品推進機構の星川専務理事にも、2カ月に1回、 連載「わたしは共用品」をご執筆いただき、数々ある共用品の成り立ちや考え方、 最新情報などをお伝えいただいています。 介護分野での共生社会づくり  国は、高齢者や障がい者をはじめ、誰もが住み慣れた地域で最後までその人らしく暮らし続けられるよう、 様々な課題に対し包括的に対処していく「地域共生社会」の実現を目指しています。 その中で、介護保険では2018年度の見直しで、障害福祉と介護保険のサービスを一体的に提供する 「共生型サービス」が創設されました。それまで障害福祉サービスを利用していた人が65歳になると、 介護保険が優先適用されるため、慣れ親しんだ事業所が変わってしまうという問題を解消するため、 訪問介護、通所介護、短期入所生活介護で設けられました。  また共用品はもちろん、車いすや特殊寝台、手すりなどの福祉用具は、 不便さを解消したり不自由になった生活動作を助けることなどを通じて 「その人らしく暮らし続けられる」ことを支援するという意味で、 すでに共生社会を支える重要な存在となっています。 自立支援支える福祉用具  介護保険の見直しでは、高齢者の「自立支援・重度化防止」がテーマの一つに掲げられており、 本紙では、福祉用具が果たす自立支援・重度化防止の役割についてもお伝えしてきました。 業界団体の日本福祉用具供給協会が、介護保険の福祉用具レンタル利用者3000人を調査したところ、 福祉用具の活用により、新規利用者ではADLの向上が見られる割合が高くなり、 継続的に利用する人では、移動や入浴、排泄などの日常生活で活動性が維持され、心身状況の悪化を防ぎ、ADLが維持されるという状況が見られました。  その人の身体状況や住環境に合った福祉用具を、早めに導入して適切に活用することで、 「今できること」をできるだけ長く「できるようにし続ける」ことで、重度化の防止にもつながっています。 共生社会の一翼担う介護  福祉用具だけでなく、様々な介護サービスも「その人らしい暮らし」を支えています。18年度の制度改正で訪問介護では、 サービスの内容を規定する国の通知が見直され、「自立生活支援のための見守り的援助」として、身体介護で食事や服薬、 掃除やゴミ出し、調理など様々な生活行為を自ら行えるよう見守りつつ援助する考え方が示されました。 介護サービスには全国で日々多くの人たちが携わり、「住み慣れた自宅で最期まで」を支えながら、共生社会の実現へ一翼を担っています。 写真:シルバー産業新聞 10ページ 月刊『福祉介護テクノプラス』 日本工業出版株式会社 山口 康(やまぐち やすし) ひとりひとりが自分の可能性を発揮できる社会を目指して  月刊『福祉介護テクノプラス』は2008年の創刊以来、高齢者・障害者の方々が適切なケアを受けることで、 誰もが自分の可能性を発揮できる社会の実現に向け、さまざまな情報を発信しています。  掲載原稿は当誌編集委員会にて協議・決定しています。編集委員長に福祉技術研究所 市川 洌(いちかわ きよし)氏。 編集委員として、国立障害者リハビリテーションセンター研究所 井上 剛伸(いのうえ たけのぶ)氏、 バリオン 介護環境研究所 金沢 善智(かなざわ よしのり)氏、西片医療福祉研究会 山田美代子(やまだ みよこ)氏、 介護支援専門員 小島 操(こじま みさお)氏ほかの福祉関連業界で活躍する方々にご参加いただき、 活発な議論を経て、毎号次のカテゴリーで福祉・介護に関する情報を掲載しています。 [提言・巻頭言] 福祉・介護に携わる有識者の取り組み、研究、ケアに関する意見・提言。 [特集] 毎号、特集テーマを設け、さまざまな角度から高齢者・障害者の豊かな暮らしのための情報・研究成果・支援論・福祉用具関連情報などを紹介。 [連載・コラム] 知識と経験をあわせもつ多彩な執筆陣による福祉介護に関する連載・コラム。 [アドボカシー] 福祉介護分野の社会状況・制度・製品等への提言・提案・現場の声など。 [製品紹介] 福祉用具の注目製品紹介。 ひとりひとりの福祉用具  当誌の大きな柱として福祉用具・機器の推進があります。それは身体状況、環境や生活目標などが、 それぞれ異なる高齢者・障害者のケアにおいて、ひとりひとりの生活を支援するために欠かせないものが福祉用具・機器であるという認識からきています。 福祉用具・機器を適切に選び、正しい使い方をすることが、ひとりひとりに合わせたケアの第一歩であり、必要不可欠なものであると考えます。  当誌ではベッド・移乗用具・リフト・車いす・歩行補助用具・入浴機器・その他各種福祉用具の適切な情報をお届けしています。 また、編集委員長 市川 洌 氏執筆の、福祉用具の選び方・使い方を総括する書籍『ひとりひとりの福祉用具―福祉用具支援概論―』も発行しています。 より多くの人が使えるモノ・サービス  共用品・共用サービスの推進は、当誌の編集方針とも合致しており、積極的に関連情報を発信しています。 特に共用品推進機構 専務理事 星川安之氏の連載「より多くの人が使えるモノ・サービス」は最新号で第116回を迎え、 これまで数多くの「身体的な特性や障害にかかわりなく、より多くの人々が共に利用しやすい製品・施設・サービス」を紹介してまいりました。 現在も好評連載中です。  今後もひとりでも多くの方に共用品・共用サービスを届けていきたいと思います。 写真1:『福祉介護テクノプラス』 写真2:『ひとりひとりの福祉用具―福祉用具支援概論―』 11ページ キーワードで考える共用品講座第111講「障害のある人に情報を伝える媒体」 日本福祉大学客員教授 後藤 芳一(ごとう よしかず)  一般的情報の伝え方を整理し(1~3)、次に不便さのある人の場合を考える(4~5)。 「伝える」に「受け取る」も含めて考える。 ▼1.情報を伝える目的  第1は、自分のために事実や知識を得たり、記録・表現する(自動詞的、Ⅰ型)。 第2は、特定の相手と情報や意見をやり取りする(相対のコミュニケーション、Ⅱ型)。 第3は、Ⅱ型の先で相手に働きかける(他動詞的、Ⅲ型)。 第4は、不特定の相手に情報を発信・拡散して、社会の受け止めをつくる(世論形成、Ⅳ型)。 ▼2.情報を伝えるメカニズム  熱の伝わり方に例えると、第1は、媒介なく伝える(熱伝導、A型)。 それには、送り手と受け手が直接接し、受け手は受け取った情報や熱量に呼応する必要がある。 第2は、送り手と受け手を媒介するもの(媒体)を通じて伝える(対流、B型)。 それには、伝えるもの(情報)が、媒体の性格に合わせて受け渡しできる形になっている必要がある。 例えば、熱は分子の振動に、知識は文字情報に翻訳する必要がある。 第3は、媒体がなくても空間を伝わる(ふく射、C型)。 宇宙空間は真空である(媒体がない)が、エネルギーは電磁波で地球に届く。 ▼3.媒体  媒体はB型(2参照)で用いる。熱を伝える媒体は流体(液体や空気)であり、 比重の違いで自然に混ざる(水の沸騰〈自然対流〉)、力をかけて動かす(扇子〈強制対流〉)がある。 環境問題では発生源の汚染・媒体(メディア=大気、水、土壌)の汚染・受け手の対策という体系だ。  いずれも、伝えるものに合わせて媒体を選び、媒体が伝えること全体の効率を決める。  情報を伝える場合も、同じ枠組で考えられる。情報には事実や知識(狭義)から感覚まで幅があり、 伝える目的もさまざまであるが、その目的(Ⅰ~Ⅲ)とメカニズム(A~C)の組合せになる。 ▼4.障害のある人に伝える  障害のある人に情報を伝えることは、障害のない人に伝えるのと共通(X)の要素と、障害のある人に特有(Y)のことがある。 Yはさらに、情報の授受の不便さを補う(Y1)ことと、伝える内容や意義が特別な場合(Y2)がある。  Xに用いる媒体は、一般と共通(共用)である。活字(ⅠA〈記号は1と2を参照〉)、案内画像(ⅢB)、 案内所(ⅢA)や、凸記号(ⅢA)、ピクトグラム(ⅢB)といった共用品など。  Y1には、情報補償のための専用の手法や補装具がある。 ルビ(ⅠA)、音声読上装置(ⅠA)、点字図書(ⅠB)、指点字(ⅡA)、意思伝達装置(ⅡB)、触地図(ⅢA)など、 Y2には、不便さのある人どうしのコミュニティをつくる、言語としての位置づけを主張する、専用の情報提供など、 情報伝達の先の社会的意味をもつものがある。点字新聞(ⅢA)、手話(ⅡA)、障害者向け求人サイト(ⅢB)などである。 ▼5.大きい流れと共用の意義  これまでの変化は、①一部の接遇の水準の高いところが先駆的に対応していた(例:テーマパーク)(~1990年代前半)、 ②企業や社会の関心が拡がり、法(例:バリアフリー法)の整備もあって、媒体の種類や活用が拡がった(例:一般商品の表示や仕様、公共空間や交通)(90年代後半~)、 ③障害者施策(例:国連障害者権利条約、障害者差別解消法)や社会の要請(例:訪日外国人の増加、東京オリ・パラ)によって加速(2010年頃~)、という動きで進んでいる。  ネットが普及して個人と情報(例:SNS)、個人と社会、社会のあり方が大きく変わっている。 その結果ハンデが改善する一方、格差を拡げる側面もある。IoTが普及すると一層拡大しよう。  共用品の取組みは、①~②では先駆的にモノやサービスの開発と普及を進めて社会変化の一端を担ってきた。 今後(③)は、不便さを除くことで多様な人が共に暮らす、そのあり方を実践するという思想的側面が重要になると考えられる。 12~13ページ 地域における良かったこと、イラストにして公開! ~共生社会を目指した地域の取組みに関する調査報告書より~  杉並の街〝良かったこと〟プロジェクト委員会(杉並区障害者団体連合会と共用品推進機構等)は、 共生社会を目指した地域の取組みに関する調査報告書の中から、杉並区で見つけた良かったことやモノを一部イラスト化し公開しました。 親しみやすい報告を目指して  共用品推進機構では、現在、ウェブサイトにて、「共生社会を目指した地域の取組みに関する調査報告書」を公開していますが、 より多くの人に親しんでもらえるように、良かったことの声を一部イラスト化し、同ページにて公開しています。  他の地域の方々からも、「自分の地域でも良かったこと調査を実施したい」との声が高まり、少しずつですが、良かったことの輪が広がりつつあります。 みんなで作る良かったこと  自分達の住む街の良かったことに気付いて、良さを広げていくために、本報告書やイラスト集を参考にしていただければ幸いです。  今回は、そのすべてを可能な限り本誌面で公開致します。  詳細につきましては、ウェブサイトをご覧ください。 杉並区で見つけた良かったことやモノ(イラスト) 図表1:良かったことやモノのイラスト【上段:駅】、【中段:食堂・レストラン】、【下段:コンビニエンスストア・スーパー】 図表2:良かったことやモノのイラスト【上段:商店街・道・イベント】、【中段:公共施設・公共サービス】、【下段:乗り物】 共用品推進機構ウェブサイト「良かったこと調査」【 http://www.kyoyohin.org/ja/research/report_goodthings.php 】 検索バーに”共用品” ”良かったこと”と入力いただいても検索できます。 15ページ 新規法人賛助会員のご紹介 〝公(こう)の精神〟にもとづく事業 大和リース株式会社 代表取締役社長 森田俊作(もりた しゅんさく)  「森田さん、〝共用品〟って、知ってます?」「いいえ、知りません。」 タカラトミーの富山 幹太郎(とみやま かんたろう)会長のところに今年の年始挨拶に伺った時の会話です。 共用品推進機構のホームページを調べてみて驚き、星川さんの本を買って読んで頷きました。 我々が「照らす事のできる活動」がある、そう思い、当社も参加することにしました。  当社は、お蔭様で2019年6月に創業60周年を迎えました。最初の主幹事業は仮設建物賃貸事業 (今でも業界トップ。応急仮設住宅や来年のオリンピックやパラリンピック用の仮設施設など)です。 現在の主力事業は公共施設や商業施設など併せて300万平方メートルの床の賃貸。 他に1100MWの再生エネルギー事業や30万平方メートルを超える緑化事業、 立体駐車場やデザインビルドの建設事業、カーシェア、コインパーキング、車、環境商材、介護福祉機器、 ICT農業機器のリースといった一見何も関わりがないように思える事業を展開しているのにはわけがあります。  社会におけるさまざまな問題や課題を共有し、これからの社会が必要とする商品やサービスを創造・提供することにより豊かな社会の実現を目指す。 すなわち「〝公の精神〟にもとづく事業を興せ」。それが大和ハウスグループ創業者石橋信夫(いしばしのぶお)の教えだからです。  このたび、共用品の考えを知って、なぜ今まで知らなかったのだろうと反省です。今までの遅れを取り戻すつもりで頑張ります。 写真:平成30年7月豪雨災害時に建設した応急仮設住宅 心のバリアフリーを目指して ~東京ガス株式会社~  東京ガスは、エネルギー供給を主とする事業活動を通じて、誰もがお互いを尊重し、 障がいのある人もない人も快適に過ごせる社会づくりの実現に向けた取り組みを進めています。  共用品推進機構様とは、2017年に開催した当社主催イベント「新宿ユニバーサルフェスタ」で連携させていただき、 2018年には「新豊洲オータムフェス」の企画段階からご協力いただきました。  「新豊洲オータムフェス」は、スポーツ・食・テクノロジーなどを テーマに、誰もが楽しむことができるよう配慮したイベントです。 日本代表選手との車いすバスケットボール体験や、片麻痺の方も料理を楽しんでいただける「片手でクッキング」の紹介などを行いました。  イベントの企画にあたっては、障がいのある方に現地確認・ご意見をいただきながら、 車いすの方が使いやすい机の高さや、視覚障がいの方にとって見やすい表示など、様々な工夫をこらすことができました。 今後も、共用品推進機構様におかれましては共生社会の実現に向けた弊社の取り組みをご支援いただきたく思います。  その他、弊社では通常業務の中で社員が様々なお客様に対応できるよう、「サービス介助基礎検定」の取得を積極的に推進しています。 2020年までには1000名取得という目標を掲げ、東京ガスグループ社員の「心のバリアフリー」化が進むよう努力していきます。 写真:視覚障がいの方へのご案内(左)、片手でクッキングの紹介(右) 15ページ (公社)日本リウマチ友の会 全国大会にてアンケート調査と製品展示を実施  公益社団法人日本リウマチ友の会は年1回、全国大会を開催されています。 今年は福岡県北九州市で開催され、共用品推進機構は共用品の展示と会員の方々向けにアンケート調査を行いました。 アンケート調査  機構では、今までに不便さ調査や良かったこと調査を実施してきましたが、 今回、行った調査は「こんなモノやサービスがあったらいいな」をお聞きする調査です。 今までの調査から今一歩踏み込み、製造・サービス業、公的機関が今後の製品開発、 サービス提供の際に参考にしてもらえたらとの思いで行った調査です。  アンケートは日常生活で使うモノと、利用するサービスに分け、自由記述方式で記入していただきました。 あったらいいモノ  日常生活で使うモノでは、靴に対するニーズが一番多く、続いてオープナー、布巾搾り器、イス、掃除機、傘等がありました。 靴では、オシャレなもの、オーダーメイドができるもの、外反母趾用、室内履き用等が挙げられ、 オープナーでは、ペットボトルや瓶、缶用のオープナー以外に調味料用、中ぶた用、ハム等の真空包装用、 小さいアルミチューブ用等が挙げられました。 包装がもう少し開けやすくなってほしいという回答は、商品種を横断しての希望でした。 サービス分野では交通機関では低床バスの増加、駅のエスカレーターやエレベーターの設置、 車椅子の人も乗れるタクシーなどが挙げられました。 さらには、リハビリ、買い物や移動の支援などのサービスが挙げられました。 展示製品  当日展示した製品は、軽い力で操作できる、片手で使えるなどの製品10点で、 家電、日用品、文具などから選び、リウマチ友の会さんに使い勝手を確認をしていただいたモノです。  軽い力で操作できる製品は、マグネット式のコンセントタップ、文房具のダブルクリップやホチキス、 電動ケアベッドのリモコン、自動ペットボトルオープナー、履き口が大きく開く靴下など。  片手で使える製品は、ポンプを押すと一定量だけが出てくる洗たく用洗剤、 ワンプッシュで開いてサッと取り出せるウェットティッシュ、左利きでも右利きでも使えるハサミ、 その他に食器や筆記用具に挿し込むシリコングリップです。  それぞれ、1つ1つ手に取って使用していただいたところ、 ・自分のより軽い力で操作できる。今度新しいのを買いに行きます ・指が痛くならないのでいい ・もう少し高さが低くなると使いやすくなると思う ・もう少し軽いと良い という改良点の意見もいただきました。  ご自身の症状によってはまだまだ使えないのが残念という方もおられ、 より使いやすくなった製品やサービスの普及が必要だと思った次第です。 田窪 友和(たくぼ ともかず) 写真:展示した軽い力で操作できる、片手で使える製品 16ページ 報道に関して 【事務局長だより】星川安之  共用品という言葉がはじめてマスメディアに登場したのは1990年7月、読売新聞の小さなコラムだった。 共用品推進機構の前身、E&Cプロジェクトのメンバーであり読売新聞の記者だった斎藤 晴美(さいとう はるみ)さんが自ら参加して書いた記事は、 企業の製品企画担当者の心に届き、会への参加申し込みに繋がった。  その後E&Cでは、目の不自由な人たちへの定性及び定量調査を行った。 新聞を見て参加された大手家電メーカーの古川 政明(ふるかわ まさあき)さんは、 その調査結果をもとに、共用品を子供たちに楽しみながら知ってもらおうと「共用品カルタ」を手作りし、 会合で発表したところ、スポンサーが現れ、印刷物となった。 その印刷物もまた、新聞に取り上げられ更なる需要につながった。  調査は、目の不自由な人から耳の不自由な人、妊産婦、車椅子使用者、弱視、高齢者と続けて行い、 それぞれ報告書としてまとめ、多くの企業、行政そして当事者団体の方々に読んでもらうことができた。 ここでも、新聞をはじめ、テレビ、ラジオ、雑誌など多くの媒体で取り上げられたことで、 多くの人が知り、読んでくれることに繋がった。  さらには、調査報告書をもとにした障害を知る各種書籍並びに、 バリアフリーは銀座からと題し20万人が参加してくれた銀座でのイベントなども、 多くのマスメディアが報道してくれたおかげで、E&Cには多くの問い合わせをいただくようになり、 市民団体から法人格をもった組織になったのが、1999年4月のことである。  財団法人になってからは、規格も国内規格に加え、国際規格へと発展し、障害当事者への不便さ調査も、幅と範囲が広がり、 さらには不便さから「良かったこと」へと進んでいった。 また、それまでのモノ中心の活動が、財団設立年に依頼を受けた「郵便局における障害のある人、高齢者への応対マニュアル」の作成を皮切りに、 万博、銀行、展示会、公共窓口などにおける「共用サービス」の分野にも発展していった。 市民団体の時よりも、事業範囲が増えるのと比例して、マスメディアでもその一つ一つの事業が取り上げられたかというと、残念ながらそうではなかった。 理由はいくつか考えられる。財団法人共用品推進機構という名称が、市民団体の時の名称に比べると軽やかさや新鮮さや無邪気さが薄れたことや、 財団なんだから、たくさん仕事をして当たり前…と、思われたのかと思っている。  書かれる機会が少なくなったため、考えたのが自分たちで自ら書くことだった。財団発足当初、朝日新聞のコラムの仕事をいただき、 財団の金丸淳子(かなまる じゅんこ)が執筆、小学館の女性セブン、週刊ポストには、森川美和(もりかわ みわ)が連載させていただいた。 その後も、シルバー産業新聞、福祉介護テクノプラス、時事通信、トイジャーナル、高齢者住宅新聞、日本経済新聞などに、 共用品・共用サービスに関して紹介する記事を書かせていただいている。そんな背景のもと、今回の特集を組ませていただいた。 共用品通信 【イベント】 日本リウマチ友の会 全国大会に出展(6月9日) 【会議】 第14回理事会(6月3日) 第20回評議員会(6月24日) 【講義・講演】 犬山市立犬山中学校 共用品講座(5月15日、森川) ドイツ・CJDベルヒテスガーデンの先生に講義(5月17日、星川、金丸) 杉並区井荻小学校 共用品展示(5月18日、星川) 杉並区セシオン 大人塾祭りで共用品展示(5月18日、星川) 武蔵野美術大学の学生に講義(5月31日、森川) 多摩市立北諏訪小学校で共用品の授業(6月12日、森川) 日本福祉大学スクーリング:大阪(6月29・30日、星川、森川) 【報道】 日本経済新聞 「音声会議システム」(6月1日) 日本経済新聞 「白杖」(6月29日) 時事通信社 厚生福祉「日本失語症協議会」(6月4日) 時事通信社 厚生福祉「中途視覚障害者のともだちの会」(6月18日) 時事通信社 厚生福祉「東京都障害者IT地域センター」(6月25日) トイジャーナル5月号「地域での共用品展示」 トイジャーナル6月号「マンガで知る障害」 アクセシブルデザインの総合情報誌 第121号 2019(令和元)年7月25日発行 "Incl." vol.20 no.121 The Accessible Design Foundation of Japan (The Kyoyo-Hin Foundation), 2019 隔月刊、奇数月に発行 編集・発行 (公財)共用品推進機構 〒101-0064 東京都千代田区神田猿楽町2-5-4 OGAビル2F 電 話:03-5280-0020 ファクス:03-5280-2373 Eメール:jimukyoku@kyoyohin.org ホームページURL:http://kyoyohin.org/ 発行人 富山幹太郎 編集長 山川良子 事務局 星川安之、森川美和、金丸淳子、松森ハルミ、田窪友和 執 筆 伊藤宜真、後藤芳一、薗部英夫、濱井良文、久松三二、三宅隆、村岡諭、森田俊作、山口康、湯浅はるみ、東京ガス㈱ 編集・印刷・製本 サンパートナーズ㈱ 表紙デザイン ㈱グリックス 表紙 杉並区良かったこと調査 本誌の全部または一部を視覚障害者やこのままの形では利用できない方々のために、非営利の目的で点訳、音訳、拡大複写することを承認いたします。 その場合は、共用品推進機構までご連絡ください。 上記以外の目的で、無断で複写複製することは著作権者の権利侵害になります。